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高齢者の運転の危険度合を免許保有者あたりの事故件数で確認してみた
交通事故のニュースを見てると「高齢者は能力が落ちてくるから、運転すると事故をおこしやすくなるんだよ」というメッセージをグイグイ押し付けてくるように感じます。
でも、本当にそうなのかな・・と納得しきれない自分がいるので調べてみました。
交通事故の発生状況と人口の推移を元データにする
シンプルに交通事故の発生状況と人口の推移を見てみます。
毎年、2月頃に前年度までの年間の発生状況をまとめて更新されるのですが、現時点では2017年までの統計が最新みたいなので、それを見ます。
人口データはこちら。
でも、現時点では推移データに2017年がないので、2017年だけは単年のデータを付け足さないとダメでしたけど。
事故件数の推移だけ見ると65歳以上の減り方が少ないのは事実
2007年から2017年の10年間の事故件数の推移です。
おお!。
64歳以下の事故件数の減り方が凄い!
対して、65歳以上はほぼ横這いに見えます。
2017年の件数が2007年の何パーセントくらいなのかを計算してみると。
- 64歳未満:約51.4% ・・約半減。
- 65歳以上:約92.3% ・・微減
たしかに、これだけを見ていると、高齢者の事故が目立って見える気がします。
でも、人口の増減もあるから、単純に事故件数だけで判断するのは危険です。
でも実行は64歳以下は減り、65歳以上は増えている
同じ基準で、人口の推移を見てみます。
64歳以下人口は減っていて、65歳以上人口は増えてます。
2017年人口が2007年人口とくらべてどのくらいか?を見ると、やはり65歳以上人口は大幅に増えてます。
64歳以下:91.2% -- 微減
65歳以上:127.9% - 大幅増ではある。
人口1万人あたりの事故数だと64歳以下のほうが多いじゃないか
高齢者になれば危ない・・というからには、例えば同じ人口なら高齢者の方がよく事故をおこすということですよね。
それを確認するために、人口1万人当たりで何件の事故がおきているか?を見ます。
あれ?
64歳以下の方が圧倒的に事故を起こしてるじゃないですか?
2007年だと、64歳以下 68.2件、65歳以上 37.5件と倍近い差があります。
そこから10年で64歳以下は2007年の約56.3%に減っており、65歳以上も2007年の約72%に減っています。
その減少率の違いがあるので差は縮まってはいますが、傾向的には変わりません。
もともと、64歳以下には免許を持てない15歳以下の人口もはいっていますからね。
65歳以上よりも1万人当たりの事故数では有利なはずなのに・・です。
免許保有者1万人当たりの事故数でみても64歳以下のほうが多い
ただ1万人あたりとすると、免許の返納とかもあるし、65歳以上は運転する人間が少ないのではないか?・・という疑問もでてきます。
じゃあ。
運転免許保有者1万人当たりの事故数を見てみます。
同じように、65歳以上と64歳以下でわけてみると。
おやおや。
64歳以下の方が多い傾向は変わらないですが、ほぼほぼそろいました。
運転免許保有者1万人当たりでの比較なので、これが実態でしょうね。
こうやって見る限り、65歳以上の運転者が64歳以下の運転者より事故を起こしやすいとはいえません。
事故件数は10代が極端に多くて、20代・80代と続く感じです
年代をもう少し細かくして10代、20代・・等10才きざみにしてみました。
すると、40代・50代・60代が少なく、そこから年齢があがっても下がっても事故発生率はあがります。
でも、突出して高いのが10代で、あと20代、80代以上と続きます。
結局、この10代の事故件数の多さが64歳以下の件数を増加させていた「異常値」になっていたみたいです。
グラフだと見づらいので、これだけ表ものせときます。
年代別免許保有者1万人当たり事故発生件数の推移
2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | ||
10代 | 272.1 | 250.6 | 243.7 | 238.1 | 229.6 | 227.2 | 218.9 | 205.7 | 188.9 | 182.2 | 165 | |
20代 | 140.3 | 127.5 | 125.1 | 124.1 | 119.6 | 118.7 | 112.9 | 103.5 | 98 | 91.1 | 83.9 | |
30代 | 89.4 | 81.9 | 78.6 | 78 | 74.8 | 72.7 | 68.6 | 62.3 | 58.6 | 54.7 | 51.4 | |
40代 | 81 | 75 | 72.7 | 72.8 | 69.1 | 66.1 | 62.9 | 57.8 | 53.8 | 49.9 | 47.5 | |
50代 | 86.9 | 78.9 | 74.6 | 72.4 | 68.3 | 64.4 | 60 | 54.1 | 50.7 | 47.4 | 44.9 | |
60代 | 87.3 | 80.4 | 76.7 | 75.6 | 71.5 | 66.2 | 62.3 | 55.8 | 51.7 | 48.5 | 47 | |
70代 | 97 | 91.4 | 89.6 | 86.3 | 81 | 76.8 | 72.1 | 66.3 | 63 | 57.3 | 54 | |
80代以上 | 108.5 | 102.3 | 104 | 99.7 | 98.9 | 92.5 | 86.9 | 82.7 | 77.6 | 71.4 | 67.1 |
まとめ:特定のバカ老人のために高齢者全体を悪く言うのは違うな
70代・80代以上になると60代のときより、1万人当たりの事故発生件数が増加するのは確かなのですが、でも、30代と70代はほぼ同じで、20代と80代以上なら20代のほうがかなり多いというのが客観的数字です。
この数字を見ているかぎり、「高齢者だから危ない!」とは言い切れないです。
もちろん、高齢者は若い人達より個人差が大きいですし、自分の能力把握もまともにできなくなった「大バカ者」以外の高齢者が適切な時期に「免許返納」をすることで、潜在的に事故の可能性を減少させている事実も当然あります。
でも、結局は個人の問題みたいなんですよね
暴走事故を起こしているのは、カッコつけで暴走して事故をおこしたり、あおり運転なんかする「かっこ悪い馬鹿者」と同じ種類の「かっこ悪いバカ老人」なのです。
それらをとりあげて、高齢者全部を危険運転者みたいに言うのはやめてほしいなと思いますね。
少なくとも、データを見る限りは。
うん。