取引所外取引とダークプール
機関投資家や個人でも相当株取引に慣れた人しか使わないであろう「取引所外取引」のひとつ「ダークプール」で、マイクロ秒の処理時間の誤差を使った後出しジャンケンみたいな「ずるい手口」でボロ儲けしている人達が問題になってますという話題です。
そもそも。
株の売買は東証みたいな「証券取引所」を通す取引と、通さない取引があります。
証券取引所を通す取引きには。
- 証券市場が開いている時間内に株式の売買を行う「立会内取引」
- 証券市場が開いている時間外でToSTNetなどの専用の電子取引ネットワークシステムを用いて売買を行う「立会外取引」
があります。
証券取引所を通さないで取引は「取引所外取引」です。
1998年の証券取引法(当時)改正で、証券会社のコンピューター上で株式などの売買をする「私設取引システム (PTS)」などが導入されてます。
ダークプールもこの「取引所外取引」です。
ダークプールは、機関投資家や個人投資家の注文を証券会社がマッチングさせて、有利な取引があれば、そこで処理します。
ダークプールは、取引所を通さないので、大口でさばいても荒い値動きがおきません。
なので、機関投資家が大口の注文をさばいたりするのに利点があります。
そういう点ではPTSも同じなのですが、PTSは注文状況や株価を投資家が外から見ることができるのに対して、ダークプールは、情報開示義務がなく、取引の参加者や注文状況や株価が外部から全くわからないという違いがあります。
ダークプールで繰り広げられるマイクロ秒レベルの争い
このダークプールが、今ヒートアップしてます。
主役は「HFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)業者」です。
ようするに、コンピュータアルゴリズムを使って、それこそミリ秒単位で取引を行うわけですけど、これがダークプールで荒稼ぎしてるらしいです。
荒稼ぎのロジック
HFTは、ダークプールで大口注文を探します。
外からは見えないので、小さな単位の注文で探りをいれる方法で探すわけです。
そうして、大口の買い注文が見つかったら、それが東証に回ってくる前に、その買い注文にマッチする売り注文を先回りして買い占めてしまいます。
そうしておいて、買った値段より高く買い注文にぶつけて利益をだす。
こんな感じで利益をたたきだします。
買いに来るのがわかっている商品を先回りして買い占める。
まさに。
究極の後出しジャンケンです。
東証のシステム間の速度差をつかれてる
ただ。
こんな後出しジャンケンみたいな不公平な取引がまかり通ると、取引所でまっとうに取引をしてい者が馬鹿を見るので、本来は、「絶対できてはいけない」はずです。
なのに、今、可能になってしまうのか?
これがどうも、仕組上の問題らしいのですね。
どういうことかというと。
海外のダークプールは証券会社内のシステムで注文を完了できるが、日本は証券会社内でマッチさせるだけでは終わられなくて、東証の立会外市場(ToSTNeT)に回送して約定させる2段階を踏むことになってるという仕組みの違いが前提としてあります。
その一方で。
HFT業者はアローヘッドという超高速取引に対応したシステムを使って、株式売買を行うことができるようになっているわけです。
この2つのシステムの処理速度には差があります。
その速度差によって。
ダークプールで大口の買い注文を見つける
↓
アローヘッドを使って、買い注文にマッチする売り注文を買い占める
↓
ToSTNeTに回送された大口買い注文に買い占めた売り注文をぶつけて約定させる
という、実にアンフェアな手法がなりたってしまいます。
この速度差がなぜ発生しているのか・・ですが。
なんと、物理的な距離の影響だったりします。
HFT業者は、アローヘッドシステムのあるデータセンターと同じ建屋内にサーバー・ラックを借りて、距離のロスを極限までなくすなどの徹底したチューニングによって、、往復300マイクロ秒以内で注文を完了できるレベルのスピードを実現しています。
対して、東証の立会外市場(ToSTNeT)の注文を完了するのに、往復で2.5ミリ秒~3ミリ秒(2,500マイクロ秒~3,000マイクロ秒)かかるので、実に、10倍近い速度差が発生してしまっているとのことです。
この差が後出しじゃんけんを可能にしています。
それにしても、ミリ秒単位で処理される注文を、マイクロ秒単位でかいくぐって後出しジャンケンを成立させるエグさは半端ないです。
東証側もバカではないので、こうして話題になってしまっている以上、ほどなく、対策して、同じ手は使えなくなるはずですけど・・まあ・・やってるHFT側は、そんなこと織り込み済みの確信犯でしょう。
とにかく。
考えた人が「超頭が良い」のは認めつつ、「おぬしも悪よのう(笑)」ではあります。
ではでは。