"BOKU"のITな日常

62歳・文系システムエンジニアの”BOKU”は日々勉強を楽しんでます

株取引の「ダークプール」で繰り広げられるマイクロ秒単位の後出しジャンケン。

今回は、機関投資家や個人でも相当株取引に慣れた人しか使わないであろう「取引所外取引」のひとつ「ダークプール」で、マイクロ秒の処理時間の誤差を使った後出しジャンケンみたいな「ずるい手口」でボロ儲けしている人達がいて問題になってます・・という話題です。

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取引所外取引とダークプール

 

株の売買というと、東証みたいな「証券取引所」で行われるイメージがあります。

証券取引所を通す取引きには。

  • 証券市場が開いている時間内に株式の売買を行う「立会内取引」
  • 証券市場が開いている時間外でToSTNetなどの専用の電子取引ネットワークシステムを用いて売買を行う「立会外取引」

があります。

でも。

実際には、「証券取引所」を通さないで株の売買をする「取引所外取引」というのもあって、1998年の証券取引法(当時)改正で、証券会社のコンピューター上で株式などの売買をする「私設取引システム (PTS)」などが導入されてます。

ダークプールもこの「取引所外取引」です。

ダークプールは割と最近に始まったサービスです。

機関投資家個人投資家の注文を証券会社がマッチングさせて、有利な取引があれば、そこで処理しますし、なければ取引所での取引にまわす・・ってな感じですかね。 

ダークプールは、取引所を通さないので、大口でさばいても荒い値動きがおきません。

なので、機関投資家が大口の注文をさばいたりするのに利点があるそうです。

そういう点ではPTSも似てます。

でも。

PTSは注文状況や株価を投資家が外から見ることができます。

対して、ダークプールは、情報開示義務がなく、取引の参加者や注文状況や株価が外部から全くわかりません。

そこが名前の・ダークたる所以なんですかね。

kabu-maga.com

 

ダークプールで繰り広げられるマイクロ秒レベルの争い

 

このダークプールが、今ヒートアップしてます。

主役は「HFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)業者」です。

www.ifinance.ne.jp

ようするに、コンピュータアルゴリズムを使って、それこそミリ秒単位で取引を行うわけですけど、これがダークプールで荒稼ぎしてるらしいのですね。

 

荒稼ぎのロジック

 

考え方としてはシンプルです。

ダークプールは、元々大口でさばくのに有利な取引方法ですから、必然的に機関投資家の大口注文がはいりやすくなってます。

HFTは、そこで大口注文を探すわけです。

外からは見えないので、小さな単位の注文で探りをいれる方法で。

で・・・大口の買い注文が見つかったら。

それが東証に回ってくる前に、その買い注文にマッチする売り注文を先回りして買い占めてしまい、買った値段より高く買い注文にぶつけて利益をだす。

こんな感じです。

買いに来るのがわかっている商品を先回りして買い占めるみたいな感じですかね。

まさに。

究極の後出しジャンケンで、100%確実にもうかります。

 

東証のシステム間の速度差をつかれてる

 

ただ。

不思議なのは。

普通では「絶対できてはいけない」はずの、こんな後出しジャンケンがなぜ可能になってしまうのか・・です。

当然ながら。

仕組上の問題があります。

海外のダークプールは証券会社内のシステムで注文を完了できます。

でも。

日本は証券会社内でマッチさせるだけでは終わられなくて、東証の立会外市場(ToSTNeT)に回送して約定させる2段階を踏むことになってるそうです。

その一方で。

HFT業者はアローヘッドという超高速取引に対応したシステムを使って、株式売買を行うことができます。

この2つのシステムの処理速度に差が存在するわけです。

その速度差によって。

 

ダークプールで大口の買い注文を見つける

アローヘッドを使って、買い注文にマッチする売り注文を買い占める

ToSTNeTに回送された大口買い注文に買い占めた売り注文をぶつけて約定させる

 

なんてことが可能になるみたいです。

どのくらい速度差があるのか?というと。

HFT業者は、アローヘッドシステムのあるデータセンターと同じ建屋内にサーバー・ラックを借りて、距離のロスを極限までなくして、往復300マイクロ秒以内で注文を完了できるレベルのスピードを実現しているそうです。

対して、TostNetは往復で2.5ミリ秒~3ミリ秒(2,500マイクロ秒~3,000マイクロ秒)かかるとのこと。

実に、10倍近い速度差があります。

うーーん。

後だしジャンケンができてしまうのもむべなるかな・・ですね。

 

機関投資家側から見ると腹立つだろうなあと思うけど

 

不謹慎ですが。

自分は最初感心してしまいました。

ミリ秒単位で処理される注文を、マイクロ秒単位でかいくぐって後出しジャンケンを成立させようというエグさとか。

そもそもブラックボックスのダークプールで、小さな単位で売買をぶつけつつ、儲かりそうな大口注文を探すアルゴリズムとか。

よく考えるよな。

相当頭いいよな・・って感じです。

もちろん。

卑怯か、そうでないかの二択なら。

圧倒的に「卑怯なやり方」です。

でも。

株取引のアルゴリズムと聞くと、普通は、値動きの傾向や世の中の動向などの株の値段にインパクトがありそうな要素をどう組み合わせて将来の値を予測するか・・みたいな正攻法を考えます。

自分がその立場になったとしても、そうでしょう。

ところが・・です。

大口の買いが入るのを見つけて、先回りして、売買が成立してしまいそうな売りを全部買い占めて、より高い値段で売りつける。

そんな方向でアルゴリズムを考えるとは。

発想が絶対そっちにいきません。

ハンマーで死角から頭ぶん殴られた感じですね。 

とはいえ。

まともじゃありません。

凄い・・とは思いますけど・・。

世間の見方もそうでしょう。

大口注文を出した機関投資家側から見ると、ものすごく腹立つでしょうし。

長く続けられる話ではないです。 

ほどなく、システムの穴も埋まり、規制も強化されて、同じ手は使えなくなるはずですけど・・まあ。

やってるHFT側は、そんなこと織り込み済みの確信犯でしょうけど。 

とにかく。

自分の懐がいたまない野次馬的立場の自分からすれば。

すごく卑怯だと思うのに、発想・技術には思わず感心してしまう。

そんなアンバランスな感情が味わえる久々に面白いネタでした。

不謹慎ですけどね(笑)

ではでは。