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工事の見積書の「法定福利費」項目について調べてみた
以下の表みたいな感じです。
従業員が社会保険に加入すると、社会保険料を事業者が負担することで、個人の負担を小さくする仕組みになっていて、ひとつひとつは小さくても、全部集めるともとになる額の16%位(2020年の場合)になります。
社会保険料改定で変わりますけどね。
社会保険加入促進のために国が指導
社会保険の会社負担額は事業主にとって、馬鹿にならない負担です。
だから、下請け仕事をする中小企業などでは従業員で社会保険加入がなかなかすすまない問題があります。
その対策のため、国主導で「法定福利費」を見積項目に含めるよう指導する動きがあり平成25年9月ころに始まりました。
この図のように、法定福利費分を元請けに出す見積書にのせて請求していいから、建設業等に従事する労働者の社会保険への加入を推進しなさい・・という理屈です。
なるほどね。
見積書にのせる法定福利費の計算方法
国土交通省の資料によれば、法定福利費の計算式は以下のようになってます。
法定保険料率というのは、2020年時点だと16%くらいの固定率です。
計算式自体は簡単ですが、問題は「労務費総額」です。
工事の見積書に従業員の給与計算で事業者負担額を1月分をまるごと反映させられるわけではないので、たいていは計算を簡単にするために「労務費率」を決めて、「工賃×労務費率=労務費」みたいな簡易的に求める方法を採用しているみたいです。
じゃあ。
労務費率ってどのくらいか?ですが・・特に決まってません。
なぜかというと、工賃には労務費以外の人件費や間接経費による原価と粗利益額がのっかっていて、その原価の内訳や利益率によって労務費率は変わるからです。
以下の図のような感じをイメージするのが、自分的にはわかりやすかったです。
でもまあ。
普通に考え得れば労務費は「標準報酬月額と給与支給総額の間くらい」の金額になるはずなので、しょせんは原価の一部である人件費のそのまた一部にすぎません。
売値である工賃にしめる割合が「労務費」とすれば、それほど大きな率にはならないであろうということは理解できました。
法定福利費項目が見積書にのっていること自体は問題ない
上記のような事情なので、建設業界のような専門工事業団体からの見積もり項目に「法定福利費」が記載されていたとしても、そういう事情だということは理解して対応しないといけない・・というのは事実です。
ただ、気をつけないといけないのは、前段に書いた計算根拠となる「労務費」の計算方法が適切かどうかです。
悪意をもってやっているわけでなくても、勘違いをしている人もいますから。
たとえば。
先日、相談をうけたケースがそうでした。
僕は工事の専門家でもなんでもないですが、人事・給与に関してはシステム開発にかかわっていたこともあって、ちょっと詳しいとされてます。
それで見てくれと言われて見積書を見たのですが、一目でおかしいとわかりました。
金額があきらかに多かったですし、「工賃の16%で計算しています。」と書いてあったからです。
なぜかというと、「工賃=労務費」はありえないからです。
だって。
こう言ってるのといっしょですから。
わかりますかね?
工賃=労務費ということは、利益を1円もとっていないうえに、労務費以外の原価項目を全部持ち出しでやっているということになるイメージが。
それを指摘して再確認してもらうと「業者側が計算方法をすっかり勘違いしていて、平謝りされた」とのことでした。
こういうことがあるので、気を付けましょう・・です。
今回はこんなところで。
ではでは。