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ソフトウェア特許の権利侵害について調べてみた

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ソフトウェア特許の権利侵害について調べてみた

仕様検討に参加したシステムの「ソフトウェア特許の権利侵害」で相談されました。

別に訴えられたわけではなく、社内で指摘があったレベルらしいです。

相談されても僕も専門家ではないのでよくわからないのですが、本当に困っているみたいなので、一緒に調べてみることにしました。

 

まずはプログラムが特許になる根拠から確認する

まず、ソフトウエアの特許がどういう範囲が対象になるのか?

どんな判断で権利侵害が認められるのか?

そんな基本的なことすらわかっていないのでは検討のしようがありません。

まずは、特許法を確認してみました。

elaws.e-gov.go.jp

第二条に以下のように明記されています。

物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明

つまり、特許の対象として「プログラム等」は含まれていて、さらに。

この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

とあるので、まあ、プログラム全般が対象になりえるのは間違いないようです。

ただ、同じ第二条に、特許自体が「発明の保護及び利用を図る」ものであり、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と書かれているので、この「自然法則を利用した」の部分がポイントになりそうです。

 

自然法則を利用した・・という条件は、どういう意味か

どうやら、発明は「一定の目的を達成するための工夫」であり、そのために「工夫しなかった場合に起こりえる自然現象を制御する」ものという考え方らしいです。

そして、自然現象を制御するには、当然「自然界を支配する法則を利用する」・・とまあ、そういう意味らしいです。

加えて、特許として認められる要件として

  • 自然法則を全体としての利用している(全体としての利用)
  • ある程度の割合で同一結果を反復できる(反復可能性)
  • 発明者以外の人が発明者と同じ結果を再現できる(再現可能性)
  • 100%の確率でなくとも、一定の確実性を以て反復できる。(一定の確実性)
  • 自然法則は結果として利用されていればよい。(結果としての利用)

などが求められるみたいです。

 

ソフトウェア特許で認められるものと認められないもの

特許庁の審査基準の資料がありました。

そこに以下のように明記されています。

特許の対象となる「プログラム等=ソフトウエア」なのですね。

いろいろ書かれていますが「ソフトウェアが、物理的装置または物理的要素(ハードウェア資源)を用いて具体的に実現されている場合には、発明であり特許の対象になる」ということです。

つまり。

エンジンの効率的な処理をソフトウェアで実現する制御するプログラム・・みたいな感じが特許の対象であって、優れたもので単なる「数式」や「アルゴリズム」や「データ構造」なんかは特許の対象にはなりえないということです。

当然、コンピュータのプログラム言語なんかも、人為的な取り決めにすぎないので、特許にはならないとされてます。

もちろん「数式」「アルゴリズム」「データ構造」であっても、それを使って具体的な結果を実現できることを示せば特許として認められる可能性もあるようですけど。

 

やっと本題の相談内容を聞いてみた

なんとなく前提の部分については頭の整理がついたので、今回の本題である「ソフトウェア特許の権利侵害の疑い」がるという内容について確認してみました。

それでわかったのは。

特許申請されている「発明」の内容をちゃんと見て言っているわけではなく、同じような機能を提供しているパッケージソフトのWebサイトを見ていて、その機能の説明が今回開発しようとしているものと似ていて、かつ、特許を取得しましたと書かれていたので、上司にあたる役員から「大丈夫か」と言われただけだということです。

なるほど・・とは思いますが、機能の説明レベル・・例えば「POSデータを解析して顧客の購買傾向を得る」みたいな・・で一致するものなどそこら中にあります。

このあたり、いちいち気にしてたら何もできないとは思いましたが、具体的に「権利侵害」と立証される可能性があるかどうかは調べようということになりました。

それには逆の立場で「自分の特許を相手が権利侵害していると立証するにはどうすればいいのか」を考えてみるのがはやそうなので、やってみます。

 

権利侵害を立証するのは実は・・とても難しい

基本、訴える側が特許の権利侵害の事実を立証しないといけません。

でも、プログラム自体、コンピュータの内部で処理される無形のものです。

相手が侵害をしたこと、つまり特許請求の範囲に記載した内容を実施したことを、具体的に証明するのが難しいことは容易に想像がつきます。

特に、特許で侵害されたとされる内容が内部処理(アルゴリズム他)にかかる部分だった場合は、相手のプログラムのソースコード等を入手して、この部分がうちの特許を侵害していると証明しないといけなくなります。

でも、「権利侵害でおたくを訴える資料作成に必要だから、ソースコードをだせ」と言われて素直に応じるものがいたとしたら「バカ」ですもんね。

まあ、ありえません。

バイナリを手に入れて、逆アセンブルする手はありますが、ハードルは高いです。

しかも、苦労して資料を作っても、日本の侵害訴訟では、アイデア自体は採用していて侵害のようにみえても、細部の構成要素の違いにより非侵害と判断されてしまうという問題があるともいわれていますから、なかなか大変です。

実際、ソフトウエア特許に関する特許侵害の訴訟で、侵害が認められたケースというのはそう多くないみたいで、特許を取得する際のアドバイスとして「相手方の技術情報やソースコードなど内部情報を構成要素とせず、相手方の製品の操作で確認できるものとマニュアル・カタログで確認できるもので侵害を証明できるように留意しておくこと」などとあるのも、むずかしさを物語ります。

ようするに、特許の権利侵害がある!と判断したり、相手方に直接クレームを入れることは簡単でも、相手方がそれを否定した場合、訴訟にもちこんで権利侵害を立証するのはとても難しいというのが現実で、それを逆の立場から見れば、よほどの一致がない限りは「特許侵害」として差し止めや損害賠償を指示される可能性は低そうです。

 

それらを頭にいれて調べてみたら、問題なかった

基本的なことは整理できたので、実際の権利侵害しているかもしれないという特許の内容と、今回のこちらの仕様の比較をしてみました。

特許を取得している企業は、その登録番号も記載しています。

特許は基本公開情報ですから、以下のサイトから検索することができます。

www.j-platpat.inpit.go.jp

でまあ。

検索して内容を読んでみたわけですが、結論から言えば問題ない・・というか、内容的には似て非なるもの・・としかいいようがありませんでした。

微妙な相違ですらありません(笑)。

似ているのは「機能の説明」の文言くらいで、中身は一致するところを探さないとないくらいのものでした(笑)。

なので、その通り伝えて、この件は終わりです。

最後はなんだかなあ・・でしたが、勉強にはなりました。

今回はこんなところで。

ではでは。