アニサキス(食中毒)かいわいの話
アニサキスに感染して猛烈な腹痛なんて話題を最近よく目にするようになりました。
ニュースによると、アニサキスによる食中毒が爆発的に増えているとか、食中毒の原因の1位がアニサキスだとか。
僕は若いとき(40年くらい前)、お魚を販売する仕事をしていたので、魚関係者ではあったのですが、当時から「アニサキス」は知られてました。
世間一般的な知名度は今ほどはなかったですが、昔からいたので、なんでまた、今頃になって急に話題になっているのか不思議です。
アニサキスがメジャーになった理由
ひょっとして「地球温暖化の影響でアニサキスが異常に増えたなんてことでもあるのか?」と興味がわいたので調べてみたのですが、海水温があがるとアニサキスの繁殖が加速することはないようなので、しっくりきません。
アニサキス食中毒は、アニサキスの宿主となった魚を人間が食べることで発生します。
魚はアニサキスの卵を食べたオキアミなどの甲殻類を食べ宿主となるのですが、これに関しては、昔から同じで急に増える理由にはなりません。
サバとかサンマとかイワシとか、アニサキスの宿主になりやすく、昔は刺身で食べる機会があまりなかった魚を刺身で食べる人が増えたからなどと言う理屈も同じです。
アニサキスの対策は僕が40年以上前に言われていた事と今で、ほぼ変わってません。
アニサキスライトなんてのが買えるようになったくらいですかね・・変化としては。
だから、商売で提供する人はちゃんと対策をしているはずですし、その辺の魚を適当にさばいて生で食べる命知らずな素人が増えたとも思えないので正直眉唾です。
だから。
僕的には「食品衛生法施行規則が2012年に一部改正され,食中毒事件票という報告書式の原因物質の種別にアニサキスが新たに追加された」からというこちらの考察が一番しっくりきました。
結局のところ「実際にアニサキス食中毒が爆発的に増えた」のではなく単に「実態が正確に把握されるようになってきただけ」という理屈です。
アニサキスうじゃうじゃ写真はインパクトあるけど
そんな話をしてたら反論がありました。
アニサキスがうじゃうじゃいるサンマのパックというインパクトのある画像を見せて「こんなのは見たことも聞いたこともない」・・やっぱり、サンマに寄生するアニサキスは増えてるんじゃないのか・・ということです。
その画像をこちらから引用します。
でも。
申し訳ないですけど、僕はこんなのも昔から見たことはあります。
ゴミ箱の中とかでなら・・という注釈付きにはなりますが(笑)。
サンマもアニサキスの宿主になる可能性は高い魚ですし、高めの温度で放置してるとアニサキスが活発になり表面にでてきても不思議はなく、驚くことでもないです。
こんな管理状態のものが売り場にでていたという事実にはひたすら驚きますけど。
これが別にアニサキス自体が増えているという理屈に結び付くとは思いません。
僕が教えてもらったアニサキスの対処法
僕は料理は好きで、家族は魚が好きなので、魚料理はよくします。
十分に加熱調理すれば問題ないのですけど、生食(お刺身とか)のときは、アニサキスは気になるので、40年ほど前の教えをを地道に守って、気を付けてます。
教え1:安全が確認できているものをできるだけ選ぶ
例えば。
僕が魚の仕事をしていた40年ほど前、「鮭」は生で食べる魚ではありませんでした。
冷凍して解凍しないままスライスして食べる「ルイベ」しかなかったです。
でも、今は同じサケ科の「サーモン」はバンバンお刺身で食べられてます。
鮭がダメなのにサーモンがが生で食べられる理由は「安全に生で食べられるように養殖されている」からです。
こういう風に「安全に生で食べられるように養殖されている魚」はたくさんあります。
まず、それを選ぶのが一番安全なのは間違いないです。
もうひとつは。
ー20度以下で24時間以上冷凍するなどアニサキスを死滅させる手立てを講じている食材を選んで買ってきて生食することです。
今は冷凍・解凍技術が進化してるので冷凍してアニサキスのリスクをなくす手立てを講じても、味や食感がおちないようになってきているので、この選択肢で食べられる魚も増えてます。
ただ、「家庭の冷凍庫で冷凍」というのは気をつけたほうがいいです。
開閉頻度が高く低い温度が安定しないので味も食感も悪くなりますし、アニサキスが死滅するのに時間がかかるなどのリスクに見合わないので、僕はしません。
教え2:鮮度の良いものを選び、できる限り速やかに内臓を取り除く
とはいえ。
教え1だけだとお金もかかるし、食べられる魚も限られます。
なので、魚屋やスーパーで買ってきた魚を自分でさばいて食べることも多いです。
アニサキスはどんな魚にもいる可能性があると思うべきなので、以下のようなやり方は地道にまもったほうが良いよということです。
まず、鮮度の悪いものは生食はさけるのが基本です。
刺身で食べるなら、魚屋に早い時間帯(午前中)に行って、鮮度が良い魚を選んで買ってきて、できるだけ早く、内臓や内臓に接触していた腹皮部分をとります。
そして、チルドルームなどで食べる直前まで低温に保つようにします。
自分でさばけないなら、そこまで店の人にやってもらえばよいと思います。
なぜ、そうするかというと、。
アニサキスは食べたエサから魚の体内にはいり、通常、内臓にいるものだからです。
そして、魚の鮮度がおちると、内臓から身のほうにうつってくるリスクが増えるので、内臓を取り除くのはとても重要だというわけです。
もちろん。
この対策だけで100%安全とは言い切れません。
ただ、これをきちんとすることで、間違いなくリスクは減ります。
教え3:目視点検で1匹でも見つかったら食べない
上記の対策でも100%ではないので、目視での点検も必ずします。
時折、見つけたら取り除いて食べる・・みたいなことを言われている方がいますけど、僕的にはそれには賛成できません。
アニサキスはとても見えづらいので、見落とす可能性が・・なんて話でもありません。
目視で1つでも見つかる=身のほうに移っている・・という時点でアウトだと考えるべきだということ・・0か100か・・です。
目視点検をして「1匹も見当たらない」ならいいけど、1匹でも見つかる、もしくは、非常に怪しい場合は加熱調理にまわすようにしろ・・ということですね。
たまたまうまくいったじゃダメだと思う
見ていただいたらわかるように、僕のやり方は相当神経質です。
正直、そこまでしなくても「たまたまうまくいく」可能性は十分にあるだろうな・・と個人的には思ってます。
なぜかというと。
厚生労働省の把握しているアニサキス食中毒は2023年で432件にすぎないからで、これは氷山の一角で年間7000件くらいはあるはず・・みたいな情報もあるのですが、どちらにしても、分母である「お刺身を食べている人数」にくらべて圧倒的に少なく、確率的には相当低いと言わざるをえないです。
だから、実際のところ。
それほど気をつかわずに釣ってきた魚を刺身でたべたり、魚屋で買ってきたアジやサンマを刺身で食べたりしるけど何ともないよ・・という人はたくさんいるでしょう。
でも、それでいいとは思えないのですね。
少なくとも、「ほかの人が食べる可能性がある」ならば、たまたまうまくいっているからOKなんて考え方は、ほんと、やめてほしいなと思うわけです。
ではでは。